#私が小説を書く理由

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 さて。

 この世の生命という生命は、種の存続の為に生かされていると私は考えている。ヒトも例外でなく、三大欲求は自身の生命の維持と子孫を残す為のものだし、どれだけ望んでも勝手にはしねなくて、生まれてきた以上私たちはしぬまで生きねばならぬのだ。その時どれだけ多くの人が生きづらさを抱えて生きていることか。
 一人一人にワークやカウンセリングをするには膨大な手間がかかる、その上私自身が説教嫌い、私がよしとする「善」は必ずしも全ての人にとっての「善」ではない、ならば勝手にお話の中から好きなように掴み取ってくれい、と最も首尾よく私の望む効用を発揮し得ると思われる方法が、物語を紡ぐことなのだった。
 感動列車に放り込み、ひとところに連れていくのは暴力だ、読むのも読まぬのも自由、何を感じるのかも何も感じないのも自由、「啓蒙」でも「カウンセリング」でも「セラピー」でもない、私がこよなく愛するのはそういう連れて行き方。物語にはそれをすることができる力があると私は感じているし、信じているし、だから紡ぐし託すのだ。

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