◆はじめに
こちらのサイト(Text Studio)のユーザーさん経由で「モノコン」なるコンテストの存在を知り、全部門コンプを目指して参加を始めたのが2023年。もう3年も経つのか、という感慨深い気持ちになります。
お題に合わせた(主に)短編小説を投稿するという特徴をもつ投稿サイト、monogatary.com。こちらで毎年夏ごろに開催されているコンテスト群を総称して、「モノコン」と呼んでいます。
小説投稿サイトとはいえ、私が主に利用しているカクヨムとは色々と仕様が異なり、毎年恒例のコンテストでありながら開催時期や実施部門が大きく変更されるのが特徴的です。今年は開催時期が昨年から約二週間ほど後ろ倒しになり、部門数が四つ→五つに変更になりました。開催期間は約一か月弱と変わらないので、全部門コンプリートするには、カツカツだった去年よりもタイトなスケジュールで挑まねばなりません。
もっとも、モノコンは「全部門に参加しなければならない」などという鬼のような規定はないので、コンプリートするか否かは参加者の意思に一存されます。しかし、昨年なんとかかんとかコンプリートを達成した以上、今年も達成したいと考えた次第です。といいながら、初手から自らの首を締める動きをしてしまったことを、あらかじめ告白しておきます……
◆コンテスト参加① リレー小説賞「これも何かの縁ですし」
またの名を時間泥棒。自分を含めた二名以上の参加者で、同一テーマの作品を書いていき完走を目指す部門です。受賞しても賞金が出たり、書籍化できたりするわけではないようですが、普段から活発にコミュニケーションをとられているモノガタリーユーザーの方々は、続々とリレーのメンバー募集を始めていました。
1、藤原先生が行く! 縁が繋ぐ旅 目指せ47都道府県【企画主として】
チーム名:縁が繋ぐ旅 目指せ47都道府県feat.水涸木犀
私はどなたかのリレーに参加させていただこうかな、と思っていたのですが「モノコン2025」の全貌が明らかになって三日後の八月十一日。ふと、企画側のアイデアが思いついてしまいました。それは、「全国各地でフィールドワークをしていた大学教授が、大学を退任して名誉教授になるのを機に日本全国を訪問し、お世話になった人へお礼を言いに行く」というものです。
フィールドワークという「縁」でつながった人たちに再び会いに行く、というのはコンテストのテーマに合致しそうですし、何より47都道府県の小話を、モノガタリーユーザーさんたちの力を結集させて集めることができれば素敵なオムニバスができあがりそうだと思いついてしまった次第です。
しかし、思いついたのは良いのですが私はモノガタリーに四十六人もお知り合いはいません。果たして完走できるのか。とりあえずメンバー募集のページを作成し、不安な気持ちのまま【都道府県No.1】和歌山県をアップし、参加者を待ちました。
すると二日後にはText Studioでお知り合いになった百度ここ愛さんと、カクヨムのお知り合いであるつとむューさんから参加表明をいただき、なんとか「リレー」はできそうだという運びに。そしてここ愛さんから「完走を目指してください」という旨の檄を飛ばされたことで、これは本気で頑張らなくてはいけないと気合を入れ直しました。
幸いなことに、その後次々と参加表明をいただき、なんと八月三十一日には47都道府県の作品が出そろうという決着をみました。後述の通り、私は三つのリレーチームに参加していますが、まさか自分のチームが最初に完走するとは思ってもみませんでした👀 自ら立候補してくださったみなさま、そしてモノガタリー上で知り合いが少ない私に代わって本リレーの宣伝をしてくださったみなさまには感謝の念に堪えません。
参加してくださった皆さまのおかげで、全十万字超えという、おそらく今回のリレー小説賞で最も総文字数の多いリレーとなりました。参加者数が二十七名も最多な気がしています。字数のみならず、ひとつひとつの物語も素敵ですので、みなさまぜひお越しくださいm(__)m 全国を旅行した気分になれますし、知らなかったまちへと出かけたくなります💼
企画ページ(参加作一覧もこちらから飛べます):
https://monogatary.com/story/521679
水涸木犀の投稿作(全3作):
【都道府県No.1】和歌山県 高野山の宿坊にて
https://monogatary.com/episode/557784
【都道府県No.21】島根県 松江の小さなハンドメイド雑貨店にて
https://monogatary.com/episode/559645
【都道府県No.47】福井県 敦賀シンボルロードにて
https://monogatary.com/episode/560611
2、謎解きはリレーのあとで【参加者として】
チーム名:ころもちさん後は任せました!
ころもちさんが企画主をされている、チーム名どおりの丸投げ型ミステリーリレー小説です。まずはころもちさんが舞台設定と最初の謎を提示し、参加者たちが「関係者の供述」として一章ずつ担当し、最後に参加者たちが自由に張った伏線や登場人物同士の関係性を、ころもちさんがきれいに回収するという形式をとっています。
このルール上、ミステリー小説を書くのに必須な「伏線回収」や「謎を解くのに必要な鍵」を作中で提示する必要がありません。むしろ好きなだけ散らかしていってくださいというのがころもちさんのリクエストでしたので、存分に暴れさせていただきました。
ミステリーというジャンルの性質上、物語の詳細や私の執筆内容は伏せさせていただきますが、参加者たちがのびのびと書いているさまと、ころもちさんが苦しんで書いたことがわかる長い最終章の対比をぜひ楽しんでください✨
(私の追加キャラはミステリージャンルをホラー・オカルトジャンルに変えてしまいうる要素を持っていたはずが、周りのキャラが濃すぎて常識人枠に収まってしまった、とだけ書いておきます( ´艸`))
ころもちさんの序章(概要欄から次章以降も確認できます):
https://monogatary.com/story/521856
水涸木犀の投稿作:
第5章 星宮 綾子
https://monogatary.com/story/522659
3、Re-Entry into the GOAL【参加者として】
チーム名:朝日吸いし冬道
粟生深泥さんが企画主をされている、箱根駅伝の襷を一区ずつ繋いでいく、文字通りの「リレー」小説です。特記すべきはこのリレーが一つの架空の大学ではなく、ひとりひとりが違う大学に所属する学生連合チームであること。それぞれの区間の順位が粟生深泥さんから予め定められており、参加者はその順位と割り振られた区間から物語を考えます。
私は往路の四区を担当しました。先行公開されていた粟生深泥さんの一区、マツオ店長さんの二区がかなりレベルが高く、内心どっさり汗をかきながら書き上げることとなりました💦 Youtubeで区間走行動画を繰り返し視聴し、走路に関する理解を深めた上で執筆。四区は、箱根駅伝全十区の中では比較的マイナー(≒アスリート目線と、いち視聴者目線で走行難易度が大きく異なる)な区間だと思っているので、走路の描写に力を入れました。
また、四区のランナー、木ノ下は「一人称は僕だが負けん気の強い二年生」というキャラクター設定にしたのですが、これもまた新鮮でした。私の中で、最近の箱根駅伝ランナーはインタビューに答える際、「僕」と言っている人が多いイメージがあったのでこうなった次第です。何も考えずに書くと「おとなしめな言動の男子=僕」「気が強めな言動の男子=俺」にしがちなので、「気が強めな言動をする男子が僕を使う」というのもアリだな、という発見がありました。今後一人称を選択する際、より一層吟味していこうと考えた次第です。
こちら非常に完成度が高く、読んでいると箱根駅伝(本物)を見たくなってくるリレーとなっておりますので、ぜひ箱根駅伝予選会および本戦のおともにお読みください💨
粟生深泥さんの企画ページ(参加作一覧もこちらから飛べます):
https://monogatary.com/story/521542
水涸木犀の投稿作:
四区 木ノ下 颯(黄鶯大)
https://monogatary.com/story/523858
◆コンテスト参加② 徳川家康賞「拝啓、家康様」
おそらく、今回のモノコンの目玉となる部門です(モノコンページの一番上にあるので)。とはいえ、こちら求められる作品設定がふんわりしており、真面目に考えるほど書けなくなるという代物でした。何しろ受賞作は巻物となり、三河武士のやかた家康館に収蔵されるのです👀 しかも要綱ページには、「タイムスリップが可能となったら家康様に読んでいただく」と書かれています。となると、過去改変を起こされかねない内容は書けない。それに、要綱には「どの時代の家康様に読んでいただくのか」という重要なポイントの指定がないため、これまた頭を悩ませる要因となりました。
結局、家康「様」というお題であることから、征夷大将軍になった後の家康様に宛てた手紙にすればよい、さりとてこれを読んだ家康様が過去改変をしないでほしいという思いから、家康様が「変えなかった」日本の在り方に感謝を伝える内容にしてみました。
水涸木犀の投稿作:
「変えなかった」将軍に、感謝の意を込めて。
https://monogatary.com/story/522208
◆コンテスト参加③ Reader Store コミカライズ賞「当て馬が主人公の物語」
フォロワーさんの投稿を見ている限り、こちらの部門が一番苦戦されているor参加を諦めている方が多い印象でした。今回のコンテストでは求められている字数が一番多い(5,000字以上)ですし、「当て馬」は一般的には「主人公のことを好きだが、結局主人公と結ばれることはない」キャラクターを指すことが多いと思いますので、「当て馬が主人公」というのは矛盾している気がしてしまいます……
しかし、Reader Storeを見たところ「当て馬が主人公」らしき物語をいくつか発見。不可能ではなさそうだなとおもいつつ、ストーリーラインが全く思いつかなかったので私にしては珍しく、キャラクターから先に考えることにしました。
ネタに詰まった時によくお世話になっている「ランダム単語ガチャ」を引いたところ、出てきたのは下記3つです。
・化けの皮
・皮膚
・町工場
「化けの皮」からポケモンのミミッキュを連想したのは私だけではないはず。私はポケモンゲームのプレイ経験はありませんが、ゲーム実況を見るのが好きなのでミミッキュの能力はなんとなくわかります。そもそも、ミミッキュがなぜあの見た目をしているかというと、人気者のピカチュウの皮を被って他者に好かれたいから。でもあくまでそれは「外側の面」に過ぎず、ミミッキュの中身を好いてくれるとは限らない。
こうした「化けの皮」の設定は、今回の「当て馬」に活かせるのではないか。しかも2つ目に出てきたキーワード「皮膚」と組み合わせれば、相手に合わせて顔(の皮膚)が変質してしまう主人公像が浮かび上がってきました。3つ目の「町工場」は投稿した第2話までに入れることはできませんでしたが、「一目ぼれした相手の好みの顔に変化するが、相手から好意をもたれた瞬間に元の顔に戻る」という特徴を持つ主人公は、漫画化にも耐えうる個性を有しているのではないかと自負しております。
投稿した2話までではあまり話は動いていないものの、ラブコメディが進みそうな雰囲気は出せた気がします。あまり得意なジャンルではありませんが思いのほかスムーズに書けてよかったです。なおヒロインがイケメン系女子なのは個人的な好みです(←)。
水涸木犀の投稿作:
「化けの皮」持ちの僕は普通の恋がしたい
~生活のために、凄腕イケメン女社長の当て馬をやらされています~
https://monogatary.com/story/524130
◆コンテスト参加④ 聴くモノガタリー賞「あの日」
私がモノコンに初参加した2023年にもあった部門です。受賞作は男性の俳優さんが朗読されます。こちら、5分間の朗読ドラマになることはわかっているので、それに合わせた字数(おそらく2,000字前後)にすべきか、要綱にある「字数無制限」を信じて自由に書くかを非常に悩みました。
そして、俳優さんのことを失礼ながら存じ上げなかったので、Youtube等でインタビュー動画や出演歴を確認すると、
・声がいい
・レンジャー系経験者
・ご本人はコメディに挑戦してみたい
・出演歴を見ると、BL作品が多め
などの情報が得られました。あまりこの部門の自信がないので、せっかくならば俳優さんが演じたいと思うコメディよりの作品にしたいと思ったのですが……結論から言うと、諦めました。
2023年のように二人での掛け合いならともかく、ソロの朗読でコメディというのがあまり想像できず、頭を抱えました。ちょうどそのタイミングで、カクヨム界エッセイの女王、宇部松清さんがXでこんなつぶやきをされているのを見つけます。
https://x.com/matsukiyo_ube/status/1959391683826835811
宇部さんはエッセイの女王でいらっしゃいますが、コメディセンスも抜群の方です。そして何より、モノコン2023のラノベ原作賞に応募した『左利き勇者』は宇部さんのアイデアを基に執筆した作品です(※ご本人の許可は得ています)。ということで、今回も宇部さんのセンスをお借りしようと思い、こちらのアイデアを基に検討をする許可をいただきました。
しかし、「水・油・火」から私が発想したのはBLの「オメガバース」的な概念。そもそもBLの時点で人を選ぶうえに、「オメガバース」は好き嫌いが多いです。しかも「男×男」の間に挟まる女の子が出てくるため、かなり読む人を選ぶ内容となってしまいました💦 さすがにこれはまずいかと、おそるおそる宇部さんにお伺いを立てたのですが、非常に心の広い宇部さんからOKをいただき、公開する運びとなりました。
前述のとおり読み手を選ぶ内容となってしまいましたが、一度「渇望」の描写があるBLを書いてみたかったので個人的には満足です(※直接的なR-15相当の性描写はありません)。宇部さん、ありがとうございますm(__)m
水涸木犀の投稿作:
『油と炎と水と』
https://monogatary.com/story/524343
◆コンテスト参加⑤ 10 MINUTES NOVEL PROJECT「10分間の愛」
今回のモノコンの募集要項を見た際に、一番ハードルが高そうだと思い後回しにしていたのが本部門です。以前「10分間の恋」というテーマで同じコンテストが開かれていたこと、更に香りに合う作品であること等指定内容が多く、かつ文字数制限が4,000字以内とタイトなので、相応のリサーチが求められると感じました。
まずは、主催のhibiさんのお香のサイトを確認。ラインナップと被らず、「愛」をイメージする香りは何が考えられるかと調べてみましたが、「情熱的な香り」だとか「しっとりした愛の香り」だとかがヒットし、その方面では書けそうになかったので断念。そもそも既存の愛を想起させる香りを作るというのは、hibiさんがこのコンテストに求めているのとは異なると判断しました。
しばらく考えていて、ふと、募集要項に書かれた「2023年に開催した第1回のお題は「10分間の恋」。
今回はその延長線であり、ある種対極的かもしれない「愛」を題材にしていきます。」という文言が目に留まりました。
「恋」と「愛」は対極的?
確かに「恋」と「愛」がもつ言葉のニュアンスは異なります。しかし、「恋」にはなくて「愛」にはあり得る要素には何があるだろうか。そこで、「『恋』をする相手は基本的に人間だが、『愛』する相手は恋する人間でないことも少なくない」ということに思い至りました。たとえば、家族愛という言葉には「恋」を含まない人間同士の「愛」が表されています。また、ペットへの愛、という表現も一般的に存在します。
そうか。「恋」ではなく「愛」であれば、相手が人間でなくても違和感なく成立しうるのか。
そう気づいた私は、はじめは飼っていた金魚の話を書こうかと思いましたが、4,000字でおさまりそうになかったのでフィクションにすることに。前述したランダム単語ガチャを引いたところ、奇跡的に一発目で「イルカ」が出てきたので、イルカと人間の愛をテーマに書くことにしました。
一般的に、動物に人工的な香りはよくないとされていますが、水族館越しに対面するイルカとの思い出をお香に乗せるというイメージであれば大丈夫かなと思っています。また、hibiさんの定番ラインナップの中にマリン系の香りが無かったので、そういった意味でも差別化が図れるのではないかと考えました。
ちなみにイルカの名前、アークが星座由来なのは、ほぼ同時並行で執筆していたカクヨム掲載の異世界ファンタジー『星座オタクOL』のために星の勉強を少ししていたためです。あの結末につなげられると気づいたのは、執筆途中のため偶然でした。良い結果になると嬉しいです。
水涸木犀の投稿作:
『アークは空高く翔ける』
https://monogatary.com/story/524581
◆全体を通しての所感
と、いうことで全5つ(リレーをそれぞれ別カウントにした場合、7つ)の部門全てに応募することができました! 今回は、カツカツだった昨年に比べると悪くないスケジュール感覚で進むことができました。間違いなく、自身企画の無謀な都道府県リレーの進捗が良かったからですね……!
結論:みなさまのおかげですm(__)m
一番のおすすめはやはりリレーなのですが、それぞれに「好き」な要素が入った作品にできたので、気になった作品がありましたらお読みいただけますと嬉しいです✨
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