モノコン2023個人的所感・後編(10月18日〆切分)

モノコン2023個人的所感・後編(10月18日〆切分)

ライトノベル原作賞

・「ライトノベル化」というのは、『出版される』という理解でよいのだろうか。「楽曲化」とか「コミック化」などメディアミックスしますよーという賞が多かったモノコンにおいて、『初となる単独の賞』だから、そういことでいいのかな。

・これだけ、『作品化にあたり、加筆、改稿の依頼をさせていただく可能性がございます』『他サービスなどに投稿したり、応募されていない完全新作でお願いします』と厳しめの条件設定がなされている。ただ、これはそれだけ本気で良質なライトノベルとして売り出したい、という意志の表れのようにとれる。昨今のラノベ業界は競争が激しいし、その中で「人生やり直し」というかなりレッドオーシャンなテーマで行くというのだから、運営側のやる気がないとね。

・『選択をミスったので、もう1回だけ人生やり直しさせてください』というテーマは、いかにも「ループもの」、ラノベらしいなって第一印象。似たような作品がすでに界隈にゴロゴロしている中、相当面白いアイデアや読ませる筆力が求められると思われる。異世界ものが主流な他サイトからも応募者が流れてきそうだし、実力にしても競争率にしても高いレベルが要求される気がする。

・とはいえ、単純に転生ループものにすればいい、ってわけでもないかもしれない。テーマにぴったり沿うならば、『もう1回だけ』『選択』したい話、ということになる。ここを厳密に突き詰めるのならば、「何かしら運命を左右する非常に重要な選択を迫られる場面があって、そこで間違えてしまったという自覚があり、正解の選択を選びたいと考えている」ということになる。つまり、「解決策が見つかるまで何度もループして検証していく」タイプのストーリーとは異なるものを作る必要がある……とまで突き詰めて言えるかはわからない(他にもやりようはありそう)けど、話作りの取っ掛かりとしては、そういう絞り方で考えてみるとよいかもしれない。『選択』とは何を選ぶのか。『もう1回だけ』やり直す理由や手法や、やり直す前の人生とどう変わるのか……

・ちゃんと目安の文字数が設定されているのはいいね。これも出版するためである気がする。明確に決めないのは、面白ければ多少枠に収まっていなくてもいい、くらいの自由度を持たせたいのかもしれない。後で改稿ありにしてるしね。

空想アニメ賞

・女子4人の青春もの――昨今の漫画やアニメでもこういう感じの作品を見かけるし、一見やることが明確でとっつきやすそうな気がするけれど、個人的にはいろいろ難しいなと感じている。

・難しい理由その1:女の子たちの青春というと、ちょっと前のキャンプとか、最近ではバンドとか、部活や共通の趣味を軸にするような物語、というのがオーソドックスだろう。ただ、今回のお題の「女子4人」のイラストを見ると、それぞれ個性がありそうではあるものの、運動が得意!って感じじゃない子もいるし、運動部とかスポーツものって雰囲気じゃないような。そうなると、わりと方向性が限定される気がする。間口は広そうに見えつつも実際は狭いところに題材が集中しそうで、その中で何かしら独自要素、差別化を図る必要があるんじゃなかろうか。

・難しい理由その2:あのー、お題になっている『まだ見ぬ青を探して』って、説明で何も触れられてないんですけど?
『彼女たちの邂逅、そこから始まる青春の物語を描く』とあるから、「まだ見ぬ青」=「青春」って解釈でもいいのかもしれない。でも、何かしらの「青」を大きなテーマに据えたほうがいいのかもしれない。もうちょっと説明が欲しい。解説spotwriteでも来るのかと期待したけど来なさそうだし。

・大賞作品は『同作をイメージしたオープニング・エンディング楽曲を制作』なので、アニメを実際に作るわけではないってところにも注意。(よほど面白いものだったら考えてくれるかもしれないけど)そういう意味では、とにかくその先の展開を期待させるワクワク感をいかに引き出すか、に特化することを考えたほうがよさげ。最近はアニメも第1話だけいろいろ観てその後継続視聴するか決める、みたいな人も多いようなので、いかに完成度の高い導入部を作るかを意識の一番に置きたいところ。

・普通は1人、また1人とだんだん輪に加わっていくのが王道展開だけど……第1話だから1人はまだ出ません、とかいうわけには行かないよね、これ。匂わせに意味深なことひとつ呟くだけ出す?それか、初めから4人揃った状態でスタートする?
悩ましいけど、例えば冒頭に先の展開を見せるとかって解決策もあるよね。大きな大会の本番前の様子を描いて、そこに至るまでの経過を、時間軸を戻して初めから語っていきます……みたいなね。

・第1話だけでワクワクさせるのが大事と書いたけど、2話以降の展開もちゃんと設定しておいたほうが、第1話の解像度も上がるのでやっといたほうがいいと思う。

モノガタリー 夏休み自由研究賞

・毎年、創作メインではない、イベント盛り上げ・執筆応援的な枠の賞があるけど、「読書感想文」「推し本棚」など変遷があって、今回が一番自由度が高い感じ。運営スタッフの例を見ても、まるで創作活動に関係なくてもよさげである(といっても基本的には文章で綴るので、創作には違いないのだけど)。

・『写真/イラストを添えて』がちょっとハードル高いというか、方向性が限られてくる感じ。イラストが描けない人は、例のようにペットを推したり、食べた美味しいものを推したり、読んだ小説を撮って感想を書いたり、あるいは何か活動した写真を撮ったりする感じか。

・リアルタイムな「日記」がオーソドックスに強そうでもあり、こういうのはやっぱり文章の上手さよりも「熱意」が求められていそうではあるので「論文」形式で好きなものへの愛情を語りつくすようなタイプが獲りそうでもある。あえて「創作」で攻めてみるのもアリかもしれない(やはり画像をどうするか問題が出てくるが)。『もちろん、友達と一緒に協力してもOK』とあるので(「もちろん」なのか?)、何か共作したり、イラスト描ける人に頼んだりするのも面白そう。

・なおこの枠、伝統的に即物的な商品がもらえる。今回は『カタログギフトや残暑見舞い』とおいくら程度なのかはぼかされているけど、メディア化やら出版やらしても懐が潤うのかどうなのかわからないしー、という現実派な人にこそオススメ。過去の傾向からしても、おそらく複数作選出されそうだし。執筆の息抜きに、これだけ何か考えて気軽に参加するのもよいだろう。

???賞 改め、 鳴り響け、文学! 文藝×monogatary.comコラボ賞

・最後の賑やかしということで、メディアミックス系が来るものと予想してた。今回音楽系がないし(テーマ曲を作ってくれる、はあるけど)、そっち系なのかなと。ソニーレーベル期待の新人とかって煽りで、そっちのデビュー情報解禁に合わせて遅れて発表……みたいな。そしたら、コンテスト看板レベルの本格派な内容が来たんで、ぶったまげましたよね。

・『「文藝」編集部の全面協力』で『選考委員には芥川賞作家・金原ひとみさんをむかえ』た上での『書籍化』だけでも目指す価値はありそうなのに、『担当編集者がつき』が大きい(しかも、佳作でもつくんですってよ奥さん)。雑誌の格としては、モノコン2021のときの週刊宝石より上じゃあるまいかってことで、小説を書いて生きていきたい人にとってはこれ以上ない、全力を出す価値のある賞がいきなり降って沸いたという。

・モノコンに限らず、monogataryのコンテストって、コラボも多いしバラエティ豊かで目新しいしで楽しくはあるのだけど、たとえ大賞を獲っても、その後に繋がりにくい(ように傍からは見える)ところがあるよなーと前々から感じていて。自分なんかは今から仕事を捨てて腕一本で家族を食わせていこう、なんて野心はまるでないのでいいのだけど、専業作家を目指す人が取っ掛かりにするには向いてないんじゃないか、という気がしていて。
そういう中で、僅かにプロ作家への道になるなと感じたのは、モノコン2021の「双葉社コミカライズ賞」と「週刊宝石からの挑戦状」、それと「『はじめての』文芸部」くらいだったので、今回はとてもいい場であると思う。

・逆に、文芸誌ということで気後れする人もいるかもしれない。いわゆる芥川賞系列の「純文学」方面なので、何を書いたらいいかいいんだろうみたいな戸惑いもありそう。でも「文藝」は文芸誌の中ではかなり柔軟なほうというイメージだし、過去の新人賞を見ても、山田詠美、綿矢りさ(「インストール」)、中村航(今や「バンドリ!」や「ステキブンゲイ」の人だけど)、白岩玄(「野ブタ。をプロデュース」)、宇佐見りん等々、あまり純文学を読まない層の人でも知っている名前が並んでいるわけで、決してWEBモノカキと隔絶した世界ではない。

・テーマも『邂逅』≒「運命的な出会い」くらいで難しくはないし、ノンジャンルと謳ってるし、挑戦するだけの価値のある賞だと思う。『やむを得ず該当作なしとさせていただく場合がございます』とわざわざ断っているのも、厳しそうに見えて本気で募集している感がある。

・あとは『他版元から作家デビューされている方は本賞の審査対象となりません』がどの程度まで適用されるのかが悩ましいところ。自分は他サイトのコンテストで作品が電子書籍化されたことはあるが、編集者がついたわけでも特に継続的に次の予定があるわけでもない単発イベントなので、作家デビューしているなんてこれっぽっちも思ってはいないのだけど、はてさて。このあたり追加で注釈が欲しいところではある。問い合わせてみようかな。

・あと普通に賞金30万円欲しいよね。

総評的な何か

・締め切り長い組は、正直もうちょっと方向性を定めるための追加情報が欲しいなーという感が否めないけど、どれもそれぞれに魅力ある賞にはなっていると思う。もうちょっと説明してくれてもいいと思うけど。

・去年までに比べて少し小粒になった感があったけど、追加の文藝コラボで、ぐっと全体の内容が締まったように思う。ちゃんと力入れようとしてるのね。もうちょっと説明が上手くなってほしいなーとは思うけど。

・誰かイラストが描ける人、自由研究でamanatzに協力してもいいよーという方いませんかね。いやまだ何やるか決まってないというか、何もしないかもしれないけど。

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コメント

  1. 水涸 木犀 水涸 木犀

    『選択をミスったので、もう1回だけ人生やり直しさせてください』
    このテーマを見て真っ先に思い浮かんだのが、森絵都さんの『カラフル』でした(あまりラノベを読まないので、ラノベの例は思い浮かばず……)。
    「ミスった」という軽い表現と、「人生をやり直し」という重めのテーマのアンマッチさがポイントになるかなと個人的には思っています。まだネタは降ってきませんが💦

  2. amanatz amanatz

    >水涸 木犀さん
    コメントありがとうございます。自分も詳しいわけではありませんが、そういう「ミスった」みたいな軽い口調

  3. amanatz amanatz

    (途中送信してしまったので続き)
    軽い口調やノリで進む感じがいかにもラノベっぽい感じなのかなーと。本当に重要で大事なことなのに、さらっと語る主人公とか多い気がします。
    もちろん、ありがちな展開に対してカウンター的な話を作りやすくウケやすいのもラノベ業界の特徴と考えているので、どう料理するかは構想次第ですねー。
    などと言いつつ、自分は正直優先度は低いので、書くかどうかはわかりません……

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