祖父のことだからもう覚えてないかもしれないけれど、それでも祖父は本が好きだから、もしかすると心のどこかで覚えていたりするのでしょうか。
祖父に、小説を書いていると自白しました。
病室のベッドの横で、意識のない姉(正しくは姉のようだった親戚)が眠っている前でした。
初めて小説を書いて、初めて賞をもらったころのお話です。
祖父は小説が好きです。
芥川賞と直木賞には都度必ず目を通します。
(『推し、燃ゆ』は今ひとつだったらしい。「推し」ってなんだ? だそうで)
実は、私もけっこう本が好きです。
好きが高じて、自分で書き始めるまでになりました。笑
孫が小説を書いているなんて、つゆほどにも思いやしないでしょう。私だって、自分が小説を書き始めるなんて思ってもなかった。
でも思いがけないことなんていっぱいあります。
悪意をぶつけてしまった相手が、まさかその日に倒れるなんて。
元気に笑っていた人が、瞼の一つも動かさなくなるなんて。
祖父は、へぇ、そうかい、と言ってくれました。
私は泣きそうでした。
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
独りで励んでいるつもりだった時間を、もっと大事なことや人に割けばよかった。
彼女が亡くなったのはもう少し後(私の誕生日の翌日だったのですが、それはまた別のお話)、
家族はみんな、よくがんばったと偲んでいました。
私は祖父に、小説を書いていると話してしまった。
自分勝手な話だったなと、ここまで書きながら、改めて思う。
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