140字でちいさな世界

140字でちいさな世界

夕方、
彼は決まって坂道を駆け上っていく。

坂の上にはかつて屋敷があった。
火災で灰塵に帰したため、今は更地だ。

しかし彼は、
死してなお屋敷へ駆けつける。

取り残された家族を助けようと、
燃え盛る炎の中に飛び込み果てた彼。

無念は彼を輪廻に閉じ込めた。

透けた背中が、
夕陽に染まる坂の上に消えた。

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