巻き込み型の創作家
「小説を書いています」
なんて、受賞経験があるならまだしも、実力も無いのに恥ずかしくて言えなかったでしょう。況してや、執筆経験すら無いのに、書きます宣言をするだなんて。
私が小説を書く発端になった出来事は、コロナ禍の大学祭にあります。が、そこに行き着くまでには紆余曲折ありました。そして今では、私の少ない知人の大半は、私が創作していることを知っています。長くなりますので、程々にお付き合いください。
大学生だった頃の私は、演劇サークルに所属していました。1年生で演劇に踏み込んでいた時点で、表現というものに憧れがあったのかもしれません。けれど、聞き手がいると恥ずかしい。そんな思いを抱えながら稽古をしていたので、演技の腕は素人止まりです。
ある時、創作サークルと掛け持っていた同期の脚本が、公演の舞台で採用されました。当時、物語なんて書いたこともない私でしたが、仄かに羨望を抱いたものです。どうしてだったんだろう。そんな彼の脚本で、私は無難な役を頂いたので、頑張って演技を行いました。それが、私の初めての舞台演劇でした。
という余談を念頭に置いてもらって、漸く本題です。
私もサークルを掛け持っていました。放送サークル。所謂、ラジオ的なあれです。
その放送サークルは、大学祭では毎年、公開生放送を行っています。その準備として、サークルメンバーが各自、放送キューシートを作成します。キューシートには、生放送で取り上げる内容や音楽などを記入します。代表がそれを纏めて編成し、当日に放送番組として生放送されるのです。
私が代表になった年は、幸か不幸か、コロナ禍一年目でした。大学祭すら今までの体制では行うことができず、何かと窮地に追い込まれました。どうなることやらとそわそわしながら届いた大学祭実行委員会からの返事は、YouTubeで生配信するということでした。なら、例年通りの放送を。いや、そういうわけにはいきません。
YouTube配信ということは、音楽の著作権が絡んできます。音楽を流す時間も放送で繫がなければなりません。そして、コロナ禍だから新入部員が少なくて人手不足。つまり、放送のネタがジャンジャン必要だったのです。
そもそも、このYouTube配信に意味はあるのか。私は疑問を抱いていました。というのも、その放送サークルは大学で幅を効かせている団体というわけでもなく、知る人ぞ知る程度の知名度な上に、特に配信するという宣伝はしていませんでした。そして、大学祭のYouTube配信は、メインステージとサブステージも行う3本立て。私達は、オマケのオマケに過ぎなかったのです。
キャンパスでスピーカーから放送が放たれるのとは違います。閑散としたキャンパスで、細々とラジオトーク。大学祭の来訪者になるはずだった学生達は、みんな家に引き籠っている。こんな弱小サークルの配信なんて見ないだろうと、やる気が失せていきました。
しかし、これはチャンスなのでは?とも思いました。この場を借りて、やりたい事をやってしまおう。そこで企画したのが、ラジオドラマでした。
物語なんて書いたこともなく、素人なりに考えに考え抜いた脚本は、当日の朝ギリギリの完成になりました。歪なところが多かったとは思いますが、メンバー十人十色の声と、著作権フリーのBGM、そして、演劇の経験を生かした構成の脚本は案外悪くなく、後輩からは「泣きそうになった」と最高級の賛嘆を頂けました。結果としては大成功でした。
「私が脚本を書くから」
そう言い切って始めた創作は、その経験があったからこそ、今も続いています。もう大学生じゃないのに、今年もラジオドラマを書くことに。流石にそれは今年で最後かな。
そんな話が、「創作音声化企画で演劇サークルにも伝えた」のと、あと「公募で佳作を取って家族にも伝えた」ってのもあるんですが、校長先生の朝礼じゃあるまいし、この辺にしておきましよう。
そんなこんなで、私が小説を書いている(創作をしている)のを知っている人は多いです。振り返れば、周囲の協力が必要、というより、周りを巻き込んで作るのが好きだったから、伝えざるを得なかったんですよねえ。
だから創作音声化なんて企画したんだなあと、ふと気付きました。この企画、最近知り合った物書きさんには、どれくらい認知されているのかな。私のウィノラボプロフィールに載っているYouTubeのリンクがそれです。まだ2回目の企画進行中、てか、停滞中……。ラジオドラマ書き終えたら、そろそろ再開としましょうか!
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