・青いイルミネーション

・青いイルミネーション

「イルミネーションでも見に行かないか」、そう言われたのは、世界が少しばかり寒くなった頃の話でした。お互い、大学の休みにでも、いわゆるデートにでも行かないかという、お誘いでした。
 遠藤くるみ、大学は二年生です。旅行が好きで、最近は旅行に行く友達が欲しいな、と思ったり、思わなかったりもします。デートのお誘いをしなさった方は、大崎だいご、同じく、大学二年になります。同じ科目を取っていたわけではありませんが、旅行サークルで一緒になったのをきっかけに、顔を合わせた時は少し話す程度の仲にはなりました。
 旅行と行っても私たち二人は完全ソロ勢みたいなものでしたので、好んで人と旅行なんかには滅多行きません。だからこそ、今回のお誘いは私にとっても少し衝撃的なことでありました。
 「良いけど、貴方、彼女とか居ないの。」「居ないよ、居たら彼女と行くさ。」「あら、そう。私は彼氏と行くわ。」「……、嗚呼……、そう?」「冗談よ」、意地悪く私がそう言うと、顔を顰めて止してくれ、と目線を逸らします。そういうところは、なんだか可愛らしくて好きです。スケジュール帳に予定を書き込み、詳しいことはおいおい連絡するということで話はまとまり、その場で私たちは解散しました。彼と離れた後、改めて出会ってから今までの2年間のことを思い出し、感傷的な気分に浸りました。
 「海は、俺も好きだよ、山とかな。」、新歓の席で、ノンアルコールを飲みながらそう彼が言っていたのを思い出します。お互い、自然の風景が好きで、山なんかに行くという話をしていました。私は電車なんかを乗り継いで遠くに行き、彼はバイクなどで遠出するという話もしていました。「へえ、そうなんですね。」「一人の方が好きだから、滅多人とは行かないけど。」「まあ、それは私も、……そうですね。」、お互いの共通点を見つけて、少しばかり気分が上がったのを覚えています。いつも誰かと旅行している写真を見ては、一人でも良いやと逆張りのような反応をしていたので、もしかすれば彼と二人で、とは言わずとも、どこかに行くことができるのではないだろうかと淡い期待を抱きました。されどそれはどうも場の雰囲気に流されただけだったようで、一夜明けると、男性とは無いな、と感じて、結局彼を旅行に誘うのをやめました。次の旅行も、その次の旅行も結局一人でした。
 二年になって、大分と大学にも慣れてきた時期。彼もそれを見計らって、声をかけてくれたのでしょうか。それでも、イルミネーションとは、好きでもない相手と行くものでは無いのでは無いでしょうか、と無駄に断る理由を、ひたすら考えてしまう私もいたのですが、一度誘いを受けてしまった以上、断るということもなんだか悪い気がして、自分のソロ精神を反省したりして、気を紛らわせました。

 当日、彼は最寄りの駅まで迎えに来てくれました。「……、バイクで行くの?」「ん、ヘルメットもひとつあるから。」「ああ、そう。」、渡されたヘルメットを一つ被って、私はバイクに跨ります。まるでこれでは、……恋仲のようで、くすぐったい気分になります。
 大分山間の方でやっているイルミネーションのようで、行けば行くほど木々などが増えていきます。人里を離れ始め、空気も同じようにひんやりとしてきました。「バイクって本当、早いわねえ!」、風がびゅうびゅうと吹く中、私は彼に叫ぶように話し掛けます。「はは、気に入ったならバイクの免許でも取るか!」、彼は上機嫌そうに反応し、声高らかにそう言いました。「まあ、それはいいわね。」「なんだって?」「なんでもない!」、さっきのことも独り言として片付けて、私はひたすら彼にしがみつきました。振り落とされるのはごめんだとでもいうように。
 「……、他の人でもバイク後ろに乗せて出かけてんじゃないでしょうね?」「ンな訳なかろう、ソロ勢だって。」「なら、これからは恋仲でもない相手を後ろに乗せることはやめておいてね。」「……、恋仲って、古臭い言い方するなあ。」、感心するように言われて、改めて自分の古臭い言葉の使い方に恥じらいを感じて、顔を赤らめます。「早く、行きましょう。」、それを誤魔化すように、私は青い光が輝くイルミネーションを目掛けて早足で歩きだしました。
 「イルミネーションとか、見るタイプ?」「あんまり、夕日とかの方が結構すきかも。」「まあ、そふぇは、俺も同じだな。」「なんで誘ったのよ。」、周りがカップルや家族で来ているのを見て、なんだか気まずい気分になりながら私は彼に言います。「気分、かねえ。」「かねえ、って、おじいちゃんみたい。」、皮肉みたいに彼にさっき私が言われたようなことを言うと、「そうかよ」、とだけ帰ってきた。
 「……、綺麗ね、青いイルミネーション。」「そうだな。」「ホタルイカを思い出すわ。」「見たことあんの?」「ある。わざわざ遠出して、見に行ったりもした。」「ご苦労なこった。」「……、今度、一緒に行ってみます?」、今度は私が、と思って、そう誘い文句を言ってみる。すると、静まり返ってしまった彼。なんだか自分も悪いなと思って、前言撤回をしようかと言葉を練り始めた時。
 「それは、……、バイクでもいい?」「……、今度は、一緒に電車で行って。」、彼がそっぽを向きながら言うので、私は脇腹をついて、また悪戯な笑みを浮かべました。

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とあるOCにて手がけたものでづ……(30分の制限時間内で小説を書く、というもの。軽く腕が死にました)久しぶりにこういうのをやったので、かなり結構労力を使いました。暫くスマホ打ちなんて人とやり取りする時以外触ってないから……!!
執筆時はBluetoothキーボードを繋いでいます、よって親指くんが悲鳴をあげました。
良ければ感想コメント等々貰えると俺が嬉しい

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