#嘘日記

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夢小説

「安民さん! 見ましたよ最後のアニメ! めっちゃ感動でした!」
 スタジオメンバーの一人からコメントが届いた。
「わたしが演じてた子、最終回で笑顔見せてて泣いちゃいました!!!」
 今度は初回からキャラクターの吹き替えを担当してくれた役者から。
「この制作に携われて良かったです」
 これはイラストの助手くんだね。
 皆、私の夢を手伝ってくれて、それが喜びになったのなら私も嬉しいよ。

 私はテレビを消して、夢を叶えた灌漑に耽ることにした。

 擬人化の異世界転移長編物語を作りたいと思い立ったのは、もう遥か昔だ。それが、いつかは動画にしたいと思い、更にはアニメーション作品に昇華させたいという大層な目標に膨れ上がっていった。
 自分の創作の幅を広げ、その過程で企画をしては色々な人と出逢い、多くの人や情報と繫がることができた。
 企画は起業になり、私は自分のアニメーションスタジオを立ち上げていた。宮崎駿とか、細田守とか、新海誠とか、そんな名アニメーション監督やスタジオと比べたら貧相なものだが、メンバーの腕の素晴らしさは引けを取らない。私が原作小説を書き、キャラクターの原画を描き、各章のテーマとなる原曲を作った。それを敏腕メンバーが脚本化し、立派な立ち絵に仕上げ、格別なリミックスを施してくれた。私のチャランポランで突飛な指示提案をしっかりと具現化してくれた。感謝しかない。信仰心並みに感謝している。
 アニメーション制作は、私の腕では補助に回るしかなかったのだが、関与さえしていれば不満は無い。私は安心して、広報、スタジオの事務、運営を行うことができた。皆、本当にありがとう!

「安民さん、ギネスの協会に連絡入れます?」
「そうだね。そう言えばキャラ数でギネス取るって、そんな目標も立ててたっけ」
 これでも登場キャラクターは抑えたつもりだったんだけど、諸事情あって予定よりも増やしてしまった。
「このアニメをきっかけに声優デビュー果たした人が結構いるのも、キャラ数が多いおかげですよね。脇役でも推される子がいるように安民さんキャラ考察頑張ってましたもんね」
「そんな他事ばっか考えてたから、博士課程をぬるぬる留年していたなんて言えないけどな」
 研究資料や古代文献まで参照しているんだ。キャラ考察が甘いなんて言わせない。
「これでやっと休めます。これまで休日なんて在って無いようなものでしたからね」
「漢字よりもスケジュール管理と調整の仕方を学んでおくべきだったな」
「ま、全て終わったんで、これで心ゆくまで休めますけど」
「返上してくれた分の休日を有意義に使ってください」
 相手には見えるはずもないお辞儀を、私は深々としてみせた。

 夢が叶った。もう満足だ……。

「全部終わって、スッキリしたと同時に、虚無っていうの?なんだか喪失感です……」
「そうっすね~。安民さん、まさかこれで解散なんて言わないですよね?」
「え? まだなんかやんの?」
 私はとぼけてみせる。
「ちょっとちょっと勘弁してくださいよ!急に解雇とか困りますよ!」
「せっかくわたし、ここの専属声優アシスタントになったのに~」
「君等ならフリーでもやっていけるだろ。私にはもう充分過ぎる。君等は好きなところで働いたらいい」
「ったく安民さん、いつまで黙ってるつもりですか? 側近のメンバーにくらいはもう次のプロジェクト解禁してもいい頃でしょ」
 落胆気味のメンバーとの会話に、イラスト助手くんのコメントが入り込んできた。
「次のプロジェクト?」
「もう次の弾用意してんすか!?」
「用意ってか、これも若い頃に抱いてた小さな夢なんだけどね」
「なんですか?」
「どんなですか?」
 ここまで食い気味に来られては隠すこともできまい。
「これも全部自作ってところは同じなんだけどね」
 私は、嘗て24歳の頃にPIXIVに投稿した1万3000字ほどの小説のリンクを彼等に送ってやった。
「簡潔に言うと、作る作品は踊ってみた動画だ」
「踊ってみた!?」
「まさか安民さん踊るんですか?」
「その小説の主人公は学生だからね。もう私じゃ似つかわしくないよ」
「これの何を作るんです?」
「まあ、それを読んでもらえば解ると思うのだが、先ずは原作小説を書く」
「はぁ」
「それを歌詞に起こす」
「楽曲化の予感……」
「それらを基に作編曲して曲を仕上げる」
「ほらやっぱり」
「それを歌い」
「安民さんが?」
「演奏する」
「安民さんが?」
「んで踊る。これは誰か起用してやってもらう」
「こいつ踊る以外全部やる気だ……」
「振り付け考えるのは初めてだけど」
「あ、そこはご自分で手掛けるんですね」
「で、もう一人ダンサーが要るんだけど」
「ペアなんだ……」
「その子は物語の中の物語に出てくる人物だからリアルにはしない。つまり、3DCG」
「ということは」
「実写とアニメーションの融合踊みた?」
「そゆこと」
「んで、歌を作るのも歌うのも奏でるのもご自分でやりたいと?」
「そゆこと」
「なるほど!」
「なるほど!じゃねえよ!俺等いつまでこの監督に付き合わされんだよ」
「おい、さっきまで新プロジェクトに期待を寄せていたのはどいつだ」
「安民さん、たしかギターできるんですっけ?」
「若い頃に触っただけだから練習せんといかん」
「僕はドラムでいいっす」
「じゃ、わたしキーボード!」
「え、俺お面被って両手叩いてればいいっすか?」
「それセカオワのDJじゃねえか。てか、君等なに勝手にバンド組もうとしてんだよ」
「よく考えろ。この人は安民さんだぞ!」
「おい、苗字が斎藤みたくなるだろ」
「そうか!全楽器自分でやりたいんだ!」
「そういうことっすよね?」
「そゆこと……ではあるのだが……」
 私は暫し考えた。
「それだと合奏の楽しさが味わえないなあ。やっぱバンドメンバー募集しようかなあ」
「そうしましょうよ。全部の楽器野郎だなんて、生い先短い安民さんには厳しいっす」
「急なディス!」
「あ、野郎は誤字っす」
「もうお歳なんですから、無理しないでください」
「限界は自分で決めるもんだ」
「安民さん、限界を知らなそうだから言ってるんです!」
「詳しい話はまた今度お願いします。僕、そろそろ抜けるんで」
「お疲れ様で~す」
「お疲れ」

「知り合いのベース弾ける奴がバンドメンバー探してたんで連れてきましょうか?」
「あと要るのはストリングス?」
「待て待て飛躍し過ぎ。まだ決まってもいない未来の話だから」
 彼等は何かと気が早い。仕事も早くて助かりはしているのだが。

「君等、あれだな。私と同じ作家属性な薫りがするな」
「今更ですか?」
「わたしも抜けます。これからもボイストレーナー兼キーボーディストとしてよろしくお願いします!」
「分かった分かった」

 やはり、どこまで突き詰めても果ては無いようだ。

 限界とは、すなわち死を意味すると思う。生きてるうちは何だってできる可能性があるんだ。やってやらないと勿体ないじゃないか。

 さて、一休みしたら、2つ目の歴史を作ろうか。

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コメント

  1. 一説ではエイプリルフールについた嘘は真実になるとかなんとか…。これはある意味辿り着く場所を目指すための道しるべなのかもしれないですね…!

  2. 群鳥安民 群鳥安民

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    どこまで成せるか、確とご覧あれ!😁

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