読了:『をんごく』
横溝賞の3冠受賞作。
大正時代の大阪、船場(せんば)を舞台に、亡き妻を想う男と、彼ら夫婦を救いたい巫女や異形の者が奔走します。
船場には行ったことがあるのですが、御堂筋と堺筋という大通りに挟まれた場所は閑静なビジネス街、及びビジネスホテルが林立しており、当時の面影をしのぶことはできません。
しかし、商業が盛んであったかの地であれば、こうした物語があっても違和感はないなと思いました。
本書で特筆すべきは、あの世に行けなかった人間の魂を食らうエリマキという異形の存在。
彼の存在によって、救われる人も多いのではないでしょうか。
本書の主人公は、妻を関東大震災が遠因となり失っています。
多くの人が亡くなってしまった災い、読んでいる時期柄、原爆投下を思い起こしてしまいます。
エリマキはかの地へ赴き、今も魂を食らっているのかもしれません。
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