読了報告 『黒い家』貴志 祐介
【ネタバレあり】
今頃初読。アンリミテッドで無料で読めたので読んでみました。
出版された当時から非常に評価が高い作品で、怖いのが苦手なわたしは手に取ることをしなかった。
……、……、……、怖いかな、これ。
若槻(主人公)のポンコツぶりがいちいちむかついた。
例)犯人が侵入を試みようとしたことに気づきながら(硝子をカットしようとした)、自室で平然と生活する。
彼は生保会社の社員で高給取り(バブル期です)なのだから、引っ越したりビジホに避難するなどできたはず。というか絶対そうするだろ?
気づいた破綻。
恋人の恵(めぐみ)が犯人に誘拐されるのだが、まず犯人はくず拾いスタイル(リヤカーを引き、手ぬぐいを頭からたらし、その上に(麦わら?)帽で大学構内に侵入する。
次いで、恵が必ず使用する女性用トイレの個室に隠れ、恵がひとりでやってくるのを待つ。これは個室がひとつずっとふさがっていたという証言があるのだ。
個室がふさがっている、すなわち鍵がかかっているわけで、どうやって中に入ってきたのが恵だと確認するんだろう。最初は友人たちときたので不首尾に終わったが、つぎにひとりできたのを狙った、のだそうだ。ご都合主義にほどがあるぞ。
他にも色々変なところはあるんだけども。
犯人の菰田幸子の圧倒的な怖さ、人間らしさのかけらもない造形が全体を強く引き締め、どんどん引き込まれていく。
なのでその圧倒的な重み、非人間的なものに対する恐怖をぶったぎってしまう、若槻のポンコツっぷりにわたしのなかのツッコミ魔人が目を覚ましてしまってあれこれ指摘し始めるので、興ざめだったのである。
ラストなんて、「俺たちの戦いはこれから始まる」的アレですからね。いろいろ変だった。
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