【ネタバレ注意】小林深雪「女子校か、共学か。それが問題だ!」
YAジェンダーフリーアンソロジーTRUE Colors収録の短編小説。
小林深雪さんの事は小学生の頃から存じ上げているのだが(購入して読んでいた漫画雑誌で漫画の原作を担当されていたので)、彼女が書いた小説は初めて読んだ。
大変読みやすく、そして面白かった。
が、ジェンダーフリーがテーマのアンソロジーだと考えると、ちょっと微妙かな…と思ってしまった。
というのも、この作品の主人公はフィクションで言うところのいわゆる普通の女の子(中学生)で、彼女自身がジェンダーについて悩んでいる訳ではなかったので。
彼女の幼なじみであり、彼女の想い人でもある男子中学生こそがジェンダーについて悩んできた当事者。
なので、欲を言えば彼の物語が読みたかった。別に彼の視点でなくてもいいので、もっと彼自身にスポットを当ててほしかったな。
おそらくは主人公が学校にいるシーンで、友達が「小学校では散々男子にからかわれて来たから女子校に入れてよかった」と話すところもジェンダーを意識して書いたのかなとは思うんだけれども。
この感想を打ちながら気づいたけれど、著者は普通の女の子である主人公が、周りの人たちの影響でジェンダーについて考えたり、精神的な面で大人になっていったりする姿が書きたかったのかもしれない。
P.31の8行目から9行目の『大人になるってことは、なんて恥ずかしくて、なんてめんどくさいんだろう。』という一文がとても良かったし、作品自体は好きなんだけど、ジェンダーフリーアンソロジー収録作として読むと少し肩透かしを食らう作品だと思う。
※画像はフリー素材をお借りしました。
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