ありがたいできごと
日常

ありがたいできごと

 先日、昔なにげなく書いて人さまにお見せした作品を、さんざん迷った末にとある場所にアップしました。お見せした方に半ば差し上げたに近い、それ以後秘蔵していた小説でした。

 うちは数年に一度くらいの頻度で、デジタルの不調からデータが飛ぶ事故に遭います。対策はしているけれど、三箇所それぞれ別の場所にバックアップを取っていても、飛ぶ時は飛びます。だから、どこにも出さず手元に秘蔵しているだけだとだいぶ不安でした。

 自分ではできの良い方の作品だと思います。自惚れかもしれません。けれど、できの良し悪しにかかわらず、外に出しておかなければ、いずれデータを飛ばして二度と再現できなくなるのではないか……しかし、当時プレゼントだとまでは口にしていなかったけれど、私の意識的には半ばプレゼントしたような作品を、誰でも見られる場所に出すのは有りなのか無しなのか。ずっとずっと迷ってきた末の決断でした。

 アップした数日後、その作品だけ妙にPVが増えていました。通常その場所では、私の作品のPVは極めて少ないのです。作品を宣伝することもなければ、広く受ける作風でもないので、たとえ新着に上がったとしても、PVなんて砂漠の雨垂れみたいなものです。だから作品がどこかで紹介されたか晒されでもしたのかな、と首をかしげました。確かめてみようかと思い切ってエゴサをしてみました。

 作品は、このうえなく好意的なご紹介をいただいていました。かつて差し上げたその方に、ものすごく喜んでいただけて、喜びの言葉とともにご紹介までいただけていました。今も、大事に大事に思ってくださっているらしい。変わらず好きでいてくださっているらしい。そうか、あの方の宝物にしていただけたのか……。少し、泣きそうになりました。

 長く書いていると、まれにだけれどこういうことがあります。いろいろなものごとが重なって、書き続けるのはもう無理なのかもしれないと心が折れそうになっているとき、こんな風に不思議と奇蹟のようなできごとや言葉にあいます。そのたびに、もう少し小説を書き続けても良いのかもしれないと思って、まだ書き続けられると思いなおします。
 気づく気づかないかかわらず、きっと誰にでもある、けれどアマチュアの物書きとしての私にとっては、とてもありがたい話です。

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ワカギ
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