ボクの夏休み読書感想文を提出します
※注意。以下、少しネタバレ含みます。
8月下旬に発売された5分後に世界が変わる~不思議な出会い編~(スターツ出版文庫)を読みました。作者に知っている方がいるので買ったのがきっかけですが、構成や展開に驚いてばかり。小説とはこうあるもの、という一種古い感覚に縛られてしまっている自分がよく分かりました。
全体の印象として、死や死からあぶりだされる生を取り上げたものが多いですね。このような世界は描き切るのが大変かと思いますが、皆さん、クリエイティブに軽々とやり切っておられました。ボクも見習います。
あとは、ストーリーを読んでいると、こういう結末になるのかな、と読者ながらに予想するのですが、そこを裏切って若干ずらしたり、想定外のものを入れたりするテクニックが美しい!
これは最後まで読み切りたくなりますね。
スターツ出版さん、ええ本出さはるわ。買ってよかったです。
以下、各作品のささやかな感想です。本当にささやかで、すいません。
※ここからネタバレあり。注意
・「パラレルワールドわたし」百度ここ愛さん
頭の1行目からヤラレます。とくかく、通常の人の発想をさらに斜め上を行く作品で、そのまま最後まで一気に突っ走っています。このストーリーに無難な展開や、作者のご都合主義など皆無。自分を大切にしようというポジティブなメッセージが心地よくて、読んだ人の記憶に残る作品です。
・「天霧さんの世界には雨が降っている」よすが爽晴さん
これ、好きぃ。すごい好き。女性の描き方が、設定はありえないのに、存在がリアルで、登場人物として好きにさせてくれます。最近、予想外の雨が多いのか、時代にも合っています。遠いところの描き方、伝え方もいいです。
・「静かな夜は有料です」天野つばめさん
どうして、こんな設定を思いつけるのか? うらやましいなぁ、と読み進めました。バンドマンが素直っていう真逆のイメージを組み合わせているのも、たまらないです。うまくいかないことばかりの日々を送る愛すべきアーティストたちに共感しまくりでした。
・「死神の少女」春川えりさん
これは、多くのお子さんにもぜひ読んでほしいですね。今の批判ばかりが拡散する社会では、勝手な思い込みとか、シチュエーションによるバイアスがかかっていることをよく感じるのですが、このストーリーは痛快で、やさしさの目覚めが描かれていて気持ちよかったです。
・「ゆみこ勉強しなさい!」三峰さん
どうしてでしょう。読んでいていて心が痛かったです。自分の過去と重なる部分があるからですね。いや、多くの人が過去の自分の後悔を抱えていると思うので、オーバーラップするのではないでしょうか。印象に残りやすい生死の内容をあえて扱わず、展開だけでフックをかけられるテクニックがいいです。
・「正論ラリアット」藤白さん
終盤で、「外しちゃうのかよ!」と思わず声を出して突っ込んだ作品。ボクからすれば、まさか、という奇抜な展開でした。予想した最後を裏切りますねぇ。クリエイティブな人たちが嫌いそうな「正論」をあえて取り入れているのもいい。いや、かっこよかった。
・「フツウになれない日々の色」雨さん
白か黒か。ってすぐ識別して、自分勝手にカテゴライズしてしまうのは、すごく恐ろしいことだと教えてくれるストーリー。登場人物まで、白と黒が入る徹底ぶり。よく考えたら芸術も光と闇の狭間にあるものを追いかける訳で、白と黒のグラデーションにあるものって、本質的に美しいんだと再認識させていただきました。
・「静寂のおままごと」朱宮あめさん
悲しい話に、さらに悲しみの仕掛けがしてあって、予想外の結末です。もし自分の家族が同じ目に遭ったらと想像するだけでつらくなり、感情移入しました。同じような経験のある方たちに、今、救いがあることを祈るばかりです。
・「仮想家族」三峰さん
いや、ありあり。こういう仮想はボクも興味あるし、やってみたくなりますよ。悪いとは思えない。リアルな家族ももちろんいいけど、実際に結婚している人からすれば、描かれている仮想の世界は超魅力的。今とは違う人生を罪の意識なく味わえるなんて! あ、いや、課金していくと罪の意識が芽生えるか。
・「死にたい気持ち、交換条件で叶えます」上原ももさん
この本はここまで最後で読者の期待や想像をあえて裏切る構成が多かったので、正直、ラストでまさか残酷なことにならないか、とハラハラさせられました。こうやって惹きつけるように仕向ける作者は確信犯ですね。簡単に死にたがる登場人物に言いたくなりました。「不真面目な世界にも、生きていくからこそ味わえる大人の悦びがあるんだよ」と。
・「ミラーマジック」桜詩さん
やりますね! 鏡の二面性と、古来に大陸から伝わった陰陽道を彷彿とさせる、陰と陽の人格。その主人公を誘導する友人は、陰陽師のようでミステリアスです。でも、二人の別人格とはいえ、実際の人間はこれくらいの相反する性質を矛盾しながらも内包しているので、リアルに感じました。
・「走馬灯ルーム。」雪月海桜さん
完成度の高い、洗練された猫写。ファンタジー要素の場面は、読む人に分かりやすく状況を描ききるのが難しいですが、やり切っています。ちなみに今まで全身麻酔とか、手術などで意識が飛び、走馬灯のようなものを見たことが2回ありますが、真っ白な明るい部屋でした。この答え合わせ的な過去の振り返りの手法・構成は、小説だけでなく映画や舞台でも成功事例が多く、ボクも真似します。
・「ALIVEレター」白井くもさん
これは、最後でやられたなぁ。予想外。下駄箱のラブレターなんて、超伝統的で古典的シチュエーションが、まず何よりアツい! オシャレ。この図書室の取扱制度、実際にやってほしい。できれは、一般的な図書館で。まちづくりのいいアイデアやと思います。こういう恋の描き方は、さわやか。
・「最高の生死」響ぴあの
大トリにふさわしい、生をテーマにした観念的、哲学的なストーリー。こういう陰っぽいけど、誘い方が大胆な女の人、魅力的だなぁ。まだ、メモの真意が読み取れないでいます。病院から始まる恋というシチュエーションもオシャレ。苦しみを抱えていても、生きるってやっぱりいいと感じさせてくれてありがとうございました。
コメント
わー!Qさんこちらにもありがとうございます✨
全部おもしろいお話ですよね。
そして私の作品にもありがとうございます😭
ずっとずっと「自分を本当に愛せるのは自分」を書き続けてよかったなぁと思ってます。今すごく嬉しいです
@百度ここ愛
短編集はトップバッターは大事で、ここ愛さんはぴったりでした!
お初にお目にかかります
感想ありがとうございます
@藤白悠夏
わ、また、作者本人から!
こちらこそ、いい小説を読んで嬉しかったです。ありがとうございました。
ボクは皆さんのようにスターツさんから出版されることに憧れて、公募からweb投稿に入ったのですが、トント成果が出なくて、見習おうと思って読ませていただきました。
技がドロップキックじゃなくて、ラリアットなのも、お父さんの世界観にピッタリで好きです。
ボクも追いつけるように、挑戦していきます。