『探し物は図書室まで』青山美智子
定期的に訪れる「図書館でぼんやり適当に選んだ本を読みたい欲」に従い借りてきた、「図書室」が題材の小説。
とはいっても、お話の主軸になるのは図書室に訪れる人達の方なので、図書室そのものがお話のメインではありません。
むしろ、図書室以外の場所が舞台になってる時の方が多かった。図書室は、あくまでも登場する人達の日常に添えるだけ、といった感じ。
でも、このあくまでも「添えるだけ」という感じがとても心地いい作品でした。
図書室にはとても印象的な司書さんがいて、その方が訪れる人達に必要な本を探してくれるのですが、これが本当にびっくりするぐらい各登場人物達の悩みに沿った本を見つけてくれるんです。
まるで相手が抱えてる悩みが見えているんじゃないかってぐらい、本当に的確なレファレンスなんですよ!
でも、それも押し付けるというわけではなく、ただ「こういう本があるよ」と示してくれるだけで、本当にそれを読むかどうかは登場人物達自身の選択にかかってきます。
司書さん自身が動いてくれるわけではない。
でも、実際のところ、本を読むってそういうものだよなぁとも思ったり。
小説であれ、それ以外のエッセイやビジネス書、哲学書に啓蒙書、あとは漫画とか。そういものを読んで何を感じるのか、それがどうその人の心に響くのかはいつだって読んでいる方次第。
そもそもそれだって読んでる側が勝手に感じてるものだし、私なんて行間深読み大好きマンだから、いろいろ想像が膨らんで勝手に感動して泣いてる時もありますし……(そっと目をそらしながら)。
けど、そうした感じ方を自分で見つけて読むから、本を読むのは楽しいし、それが日々を生きるパワーに変わってくれたりするんですよね。
そして、こういう「自分で見つける」という選択は、日常生活のいたる場面で必要とされてくるものでもある。
ときには、それが人生を大きく変えるきっかけにもなる。
ほどよい距離感で、でもこうした人生における大事なことを的確に突いてくるような、そんな小説のように思いました。
あとね、この本、一瞬だけど文学フリマが出てくるんですわよ!
文学フリマですわよ!文学フリマ!
展開的にしんみりした気持ちになって読んでたところに、突然知ってるイベントが出てきたのでびっくりして、しんみりが宇宙の彼方に吹っ飛んでいっちゃいましたわ!(笑)
ちなみに、実は青山美智子さんの本を読むのはこれが初めてだったのですが、チラッと著書紹介を読んでみたところ、近所の本屋で見かけて気になって本の作者さんであることが判明しました。これまた、なんたる偶然。
機会があったら、そっちの本も読んでみたいのですわ~。
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