【ネタバレ注意】如月かずさ「いわないふたり」
YAジェンダーフリーアンソロジーTRUE Colors収録の短編小説。
レズビアンのカップルのお話。
主人公の真結(まゆ)がとても消極的というか逃げ腰で、読んでいてモヤモヤしてしまう事が何度かあった。
でも、中学生の女の子が恋人(同じ学校の子)から「カミングアウトしない?」なんて言われたらいろいろ考えてしまうのは当然だと思う。そして、レズビアンだという事を気にしているからこそ「クラスが違う女の子同士が学校内で会話をする」というだけのことができないという事も理解できる。
でもきっと、恋人の千歳は「クラスが違う女子二人が学校で会話することくらい、堂々としていてもよくない?」と内心思っていたんじゃないかなぁ。そうじゃなきゃ、「カミングアウトしない?」なんて言い出したりしなかった気がする。あと、真結が女友達と手を繋いでいるのを何度か見かけていたらしいし、そのことに対するストレスもあっての提案だったのかなーと個人的には思った。
真結は悪い意味で要領がいいというか…もっとストレートに言えば、ずる賢く振舞って友人たちと打ち解けているような感じがして、あまり好きになれなかった。特に友達が恋人の事を悪く言ったときにかばうどころか、それに同調してしまった場面はキツかった。
まあ、空気を読んで無理して同調したというより、本当に千歳の表情の変化が分かりにくいと感じていたっぽいので馬鹿正直なだけな気もするけれど。
千歳は真結より人付き合いが苦手そうでありながら「カミングアウトしない?」と問いかけたりするので、芯が強い女性なのだろうと想像できる。実際、真結も「千歳はつよい」と言っているし。
けれど、強いと言ってもまだ中学生なわけだし。母親との仲は良くないらしいし。
そんな彼女がバスケの試合を見に来てくれた恋人にまともに応援してもらえなかったり、日常的に恋人が女友達と手を繋いでいる姿を見ていたりしたのだと思うとこちらが悲しくなってしまったよ。
さらには先ほども書いた通り、陰で悪口を言われても恋人に庇ってもらえていないし…。千歳本人がその場面を見聞きしていないからよかったものの。
ハッピーエンドで終わっている物語だけど、千歳はともかく真結に対して「本当にこれからも、千歳とちゃんと向き合いながら付き合っていけるのか?」とわずかな不安が残ってしまった。
※画像はフリー素材をお借りしました。
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