正直者の村に行ってきました！ #嘘日記

　旅をしてたら分かれ道に出たんです。

　なんと、片方は正直者の村に、もう片方は嘘つき者の村につながってるらしいんですよ。

　ドキドキしますよね。

　
　で、その分岐点に2人立ってたんですね。

　前情報によると、1人が正直者、もう1人が嘘つきなんですって。

　正直者は本当のことしか、嘘つきは嘘しか言わないんですって。

　
　一応聞いてみました。

「あなたは誰ですか？」

　そしたら片方が答えました。

「正直者の村の者です」

　もう1人もこう答えたんです。

「正直者の村の者です」

　
　でも僕は騙されませんよ。

　片方は嘘をついてるんです。

　
　できれば正直者の村に行きたいので、嘘を見破る必要があります。

　ワクワクしてきました。

　
　でもね、僕知ってるんです。

　この問題の解答。

　
　どちらかの道を指差して、「あなたの村はこっちですか？」って聞くんです。

　指差した道が正直者の村だった場合。

　正直者だったら、「はい」って答えますよね。

　嘘つきだったら、この人の村はこっちじゃないので、本来の回答は"いいえ"ですが、嘘つきなので「はい」と答えます。

　どちらにしても「はい」になるんですね。

　
　指差した道が嘘つきの村だった場合。

　正直者だったら、「いいえ」ですよね。

　嘘つきだったら、本来は"はい"なので、嘘ついて「いいえ」と答えます。

　どちらにしても「いいえ」になるんです。

　
　つまり、その人が正直者か嘘つきかはわからなくても、「はい」なら正直者の村、「いいえ」なら嘘つきの村ってわかるんですよ。

　おもしろいですよね。

　
　だから僕は意気揚々と訪ねたんです。

「あなたの村はこっちですか？」

　すると1人がこう答えました。

「わかんない」

　
＿人人人人人＿
＞ わかんない ＜
￣Y^Y^Y^Y^Y￣

　
　なるほど、これも一種の嘘ですね 笑。

　斬新ですが、この人が嘘つきなことはわかりました。

　
　なのでもう1人に聞きました。

「あなたの村はこっちですか？」

　するとこう答えたんですよ。

「俺は過去のおまえだ」

　
＿人人人人人人人＿
＞ 過去のおまえだ ＜
￣Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y￣

　
　嘘じゃん！笑

　絶対違うじゃん。記憶にないもん。

　
　会話にもなってないですが、完全な嘘をつかれました。

　この人が嘘つきです。

　
　そうなってくると、困りました。

　「わかんない」の人、こっちが正直者です。

　
　正直者の迷子です！

　
「名前は？」

「わかんない」

「ご両親は？」

「"ごりょうしん"ってなに？」

「ひとりで来たの？」

「お日様がついてきてくれたから、ひとりじゃなかった」

　
＿人人人人人人＿
＞ バカでした！ ＜
￣Y^Y^Y^Y^Y^Y￣

　
　正直者で迷子のバカでした！

　
　困りました。

　いちかばちか嘘つきのほうを当てにするしかありません。

　
「あなたの村はこっちですか？」

「待て。ほんとに過去のおまえなんだって」

「正直者の村はこっちですか？」

「証拠だってあるんだ」

「このバカはどっちから来ましたか？」

「それを見たら信じるだろうよ」

　
＿人人人人人人人人人＿
＞ 会話になりません！ ＜
￣Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y￣

　
　全然会話が成立しませんでした。

　とはいえここまで言われると、信じてあげたくなってきました。

　もしかして本当にこっちが正直者で、本当に過去の僕なんでしょうか。

　
「証拠にほら、首元に昔幻獣に噛まれた傷があるだろ？」

　
＿人人人人人人人＿
＞ 嘘つきでした！ ＜
￣Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y￣

　
　もう嘘とかそういう次元じゃないですが、やっぱり嘘つきでした。

　僕の首元に傷はないし、幻獣なんていないし、そもそもこいつの首元に傷なんてなかったです。

　鉄壁の嘘です。

　
　途方に暮れた僕はふと思いつきました。

「じゃあ、僕は帰りますね」

　そう言ってその場を離れ、遠くから隠れて様子を見ていました。

　
　すると夕方18時を回ったころに、嘘つきの自称過去の僕が一方の道を歩き始めました。

　彼は彼の村に帰ったのです。

　
　嘘つきな彼にだって、家と生活があるんです。

　もしかしたら嘘つきな奥さんと嘘つきなお子さんがいるのかもしれません。

「パパ早く帰ってきてほしくないね」

　なんて嘘をつきながら待ってるのかもしれません。

　
　彼が去った後、僕は反対の道を選び、無事迷子のバカを正直者の村に送り届けることができました。

　
　よかったです！

　もはや嘘とか本当とか関係なく、時間と人の営みが解決しただけですが、結果オーライです！

　
　さて、待ち望んだ正直者の村ですが……

　
＿人人人人人人人人人人人人＿
＞ 全然おもしろくなかった！ ＜
￣Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y￣

　
　ただただ正直な人がいるだけの村ですからね。

　
　次は嘘つきの村に行ってみたいです。

　その際は僕もとびきりの嘘を用意していきたいと思います。