今もまだタイミングを見計らっている
もうそろそろ潮時だとは思う。でも、いざ彼女を目の前にすると「実は私」が紡げない。
高校で出会ったRとは、同じアイドルグループが好きだという理由で一気に仲良くなった。同じ部活にも所属し、ライブにも何回も一緒に行った。
卒業しても尚、近しいところで生活していて、今では同じアパートで暮らしているほどだ。親友と言わずして何と言おう。
しかし彼女にさえ明かしていない秘密が、私にはある。
私は中学のときから二次創作にハマり、創作に励んできた。対象はRと仲良くなるきっかけにもなったアイドルグループ。彼らを小説の中で好きに動かし、好きに喋らせ、とにかく好きにした。
旧Twitterではフォロワーも1500人を超えるほど、それなりにその界隈では名を馳せていたと思う。私の二次創作活動は、5年ほど続いた。
もちろん高校でRと出会ってからも続けていたことになる。Rとアイドルについて語る傍ら、私は密かに彼らにいかがわしいことをさせていた(小説内で)。ア〜ンことやこんなことをさせた(小説内で!)。
Rは寛大な子である。私が二次創作をしていたと知っても、恐らくは受け入れてくれたであろう。しかしどうしても言えなかった。作品の中には私の性癖がこれでもかと詰まっていたし、何よりRは現実の彼らを大事にする子だった。
熱愛が出ても「人間なんだからそっとしといてあげればいいのに」スタンスだった彼女に「実は夢小説で彼らにア〜ンことやこんなことをさせています!フォロワーも1500人です!どうも皐月(当時のアカウント名)です!!」なんて言おうもんなら、表面では受け入れてくれても、裏で困惑しただろう。ていうか、何事もなく受け入れてもらったら私のほうが困惑する。
今は私も彼女もアイドルグループのファンクラブから抜けてしまった。私も二次創作界隈から足を洗った。
もう時効だろう。「実は私さ」なんて明かしてしまいたい。
それでもまだ言えていない。言えない。言いたいのに言えない。だって幻滅されたくない。
彼らのことが好きだった。好きだったから妄想に花を咲かせたし、1500人のフォロワーと猥談で盛り上がった。
Rとはできなかったことだ。彼らに対して邪な気持ちを持っていたことを、本当は明かしたかった。親友だから、唯一のオタクのリア友だったから。
いつか話せるとしたら、彼らが芸能界から姿を消したあとかもしれない。私が結婚して、彼女が結婚して、性的な思いが完全に彼らではない第三者に向けられたときに許されるかもしれない。
それがいつになるかわからない。私の秘密を親友に明かすときを、私は今もまだタイミングを見計らっている。
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