「#嘘日記」 

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古い日記帳

 2027/7/19 曇りのち雨
 今日は大学の講義が午後にあったので、それまでに朝寝坊しようかと思っていたのに何故か早起きしてしまい。二度寝でもしようかと一瞬考えたが、そのまま寝過ごしてしまいそうだなと思い至り、気分転換で部屋の掃除をすることにした。
 そもそも、引っ越して一年。インテリアには興味がなく必要最低限の家具しか置かずに、大学とバイト先が終われば寝るために帰っていただけなので男の一人暮らしという割には散らかっておらず、すぐに終わってしまったのだが……。
時計を見れば、AM 10:30と指している。通学時間を考えても講義にはまだ間に合うと判断し、ほぼ開けた事が無い押し入れを雑巾がけしようと考えた。押し入れを開くと少しカビ臭い。開けたのが引っ越したばかりの頃に、少量の荷物を仕舞い込んだくらいにしか開けなかったからそれは仕方ない。ささっと収納していた荷物を外に出す作業を済ませると、荷物の陰に隠れて古いノートが見つかった。
引っ張り出してみると、そのノートは小学生時代に使っていた植物の写真が印刷された日記帳であった。このノートを渡されて夏休みの日記を書く宿題があったっけ…。当時はライオンの表紙だったな。と自分の少年時代を懐かしんだ。だが、よくよく考えてみると大学のために離れた故郷から上京する時にこんなノートを持って来ていないことにすぐに気が付いた。名前の欄には、「2年8組 田どころ もえか」と拙い字で書かれていた。
そのノートはよく見ると日数が経っているらしく、所々に茶色のシミがポツポツと付いており、湿気を何度も吸い込んでいたのかページが波打っていた。今からでも読みたかったのだが、流石にその時間は無く後の楽しみとして掃除を済まし、大学に行った。

2027/7/20 0:00
今日の仕事を全て終わらせると気づけばもうこの時間になり、手早く夕飯と風呂を済ませ、心待ちにしていた例の日記を開いた。

 2000年7月19日 水曜日 ☁
 今日は、しせつの人からお外であそんじゃいけないと言われたので、しせつの中でみかちゃん。かおりちゃん。はるとくん。しょうくんの4人でトランプしてあそんでいました。はるとくんがババを引いてくやしがっている時に、見たことのないへんなおじさんが3人わたしたちに声をかけてきました。おじさんが言うには「おじさんたちを手つだってくれないか?おれいはちゃんとするよ」すると、私たちの中で1ばんのガキだいしょう?のはるとくんが、おこりっぽいくちょうで「だれがそんなわけの分からないのに手つだうんだよ!」と話しかけたおじさんをつきとばしました。ババを引いたのがそんなにくやしかったらしいです。そして、つきとばされた時におじさんから何かお花みたいないいにおいがして、おじさんの方を見るとおじさんはニヤニヤわらっていました。

イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
  ウデがアシが関節がミシミシミシミシミシミシミシミシミシネジレルネジレルホネがバキバキバキバキバキバキバキオレル……
クルシイクルシイクルシイクビがミえないダレかにシメられるイキがデキナイダレかタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ
 ミンナクルシソウ。クチからアワがフイている。

 気が付くとさっきまでの、イタイのとクルシイのが、ウソみたいにきえました。だけどみんな、おかしいんです。あんなにクルシガッテいたのにたのしそうにわらっているのです。あまりわらわないしょうくんが見たことがないくらい大きな口をあけて、アハハとわらっていました。
  おじさんはそれを見て「どうかな楽しかったかい?気に入ってくれたのならおじさんたちのところに来ないかい?」とほかのおじさんが黒い大きなふくろをあけて中みをわたしたちに見せつけました。中みはいっぱいに、おかしやゲームきがぎっしり入っていました。
「おじさんたちについて行かないかい?ついてきてくれたらこれを毎日あげるよ」
みんな大はしゃぎでついて行く気マンマンでいたのがとてもこわかったです。
 なんで?みんなあんなにくるしがってたのに?みかちゃんはさいしょあんなにおびえていたのに。そんな怯えているわたしに気づいたらしく、みんながわたしをせっとくしてきました。
 「いたいのも、さいしょのうちだったでしょ?」「ついて行ったらおかしもいっぱい食べれてゲームであそべるよ。いっしょに行こうよ」とわたしのかたをつかむあかりちゃんは、いつもとかわらない明るい声で言うのに目は左右ちがうところをみていてわたしに話かけました。やさしくておっとりしているみかちゃんも同じようにいっしょに行こうとさそってきます、わたしは頭がさっとつめたくなってあかりちゃんをつきとばしてまどからにげました。

 
同日 0:10
 なんだコレは?一体何なんだ……。
文面は、少女が書いた文字にある特徴的な丸みを帯びた文字で、ひらがなが多く読みにくいただの夏休みの日記かと思えば最初は友達四人で楽しくトランプ遊びをしている最中に、見知らぬ男達に何かを投与され苦しみ出し、日記を書いていたもえかちゃん意外が狂い出した恐ろしい内容に、全身の震えと鳥肌が止まらない。もし、これが本当の出来事ならこれは、児童虐待と誘拐の様子を生々しく綴った記録になる。
この日記に記されている事が事実なのか、はたまた誰かのイタズラで作ったただのデマなのか、正直疑い深い内容だった。いや、正直言うと嘘だと信じたい。そうだきっとそうだ。だってこのマンションはまだ築3年で、建つ前はずっと駐車所として利用されていたと不動産に直接聞いたのだから間違いない。だからこのマンションが建つ前に存在する日記帳がこの部屋の押し入れにある訳がないのだ。
もしかしたら、私はこのマンションに引っ越す前の住人の忘れ物なのかも知れない。明日の朝大学行く前に、近くに住んでいる大家さんに相談して不動産に渡すことにしよう。そう結論に至ったが次のページを捲り読み進めるのが躊躇らうが、今後もえかちゃんがどうなってしまうのか気になり。意を決してページを捲る事にした。

 2000年7月20日 ☔
 目がさめると知らない天じょうだったのがほっとしました。おきあがると、うでがいたくて右の方を見てみるとてんてきされていて、これがなんなのかわからない。上につっているふくろに入っているものが、もしかしてあの時とおなじになるんじゃないかと考えると怖くなってさけんでむ理矢理はりをぬこうとあばれました。
 すると、あわてて女の人と男の人が入って来てここはびょういんで、てんてきはえいようざいだからむ理矢理ぬこうとしないでね。とやさしい声で男の人は言いました。男の人はびょういんの先生だそうで、「きみは、ここから近いじてんしゃのとめているところでねているところを、ぐうぜん見つけた人にここまでつれて行ってくれんだよ」と教えてくれました。わたしをここまではこんでくれた人はいつのまにかどこかに行ったらしく、おれいが言えなかったのがざんねんでした。
かんごふさんには「きのうの夕方からふっていた、雨にあたってすこしおねつが出ているから、あと二日か三日ここで大人しくねていれば、おうちに帰れるよ」とはげましてくれました。

2000年7月21日 ☀ときどき☔
 ばんごはんをたべていると、かんごふさんがうれしそうなおかおで「お父さんがおむかえに来てくれたよ、よかったね。おねつも下がったからもう先生が、おうちに帰ってもだいじょうぶだよって言っていたよ。よかったね」とニコニコわらっていました。そして、かんごふさんのうしろにおとといあの時にいた男の人が立っていました。「もえか~しんぱいしたんだぞ~。さぁ、お父さんと帰ろう」と言ってわらいながらこっちに歩いて来ました。わたしはこわくってガタガタとふるえながら、首をブンブンふりながら「この人はお父さんじゃない!来ないで、来ないで!わたしにお父さんなんていないの‼」とさけんでも、男の人は「そんなこと言うんじゃないぞ、さびしいだろう」と言いながら、コロコロ動くつくえをどかしてわたしをだっこしてへやから出て行こうとしました。
ろう下に出るとあの時にかいだいいにおいがして、そこにいる先生もかんごふさんも、ほかの人たちもニコニコ私を見てたいいんおめでとうと、言ってくる。左右バラバラの方を見る目で……。

イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだまたあそこにもどりたくない!だれかたすけて!

同日 0:30
 最後に書かれていた文字は凄く乱れて、あちらこちらに赤茶色のシミが付着し、次のページを捲ってみてもシミが乾燥する前に違うページと張り付いて、捲れ難くくなっていて結局7/21以降の記録が書いておらず。最後のページには左下に小さく“読んだな“と明らか大人が書いたであろう文字を見つけてしまいすぐにページを閉じた。やってしまったと読んだ事に後悔した。
ノートはゴミ箱に捨てるか燃やすか考えたが、押し入れに見つけた場所に押し込んだ。こんな恐ろしいモノと一刻も早く関わりたく無いという気持ちが占領し、目を逸らすことを選んでしまったのだ。そして、あの日記帳を見つけたこの部屋に居るのも恐ろしく感じてしまい、すぐ様この部屋に出て行こうと決意した。
とりあえず朝一で大学、バイトを休みの連絡を入れ不動産を回ろう。見つかるまでは、ネカフェや友達の所に転がり込もう、駅から徒歩3分で安い家賃と隣近所に誰も住んでおらず、静かに暮らせる環境で暮らせるのが気に入っていたのに、残念だなぁと物思いに耽ったりせめて、買い物はいつも利用している、安くて、いつも何処からか花のような良い匂いがする商店街から近い場所に、住まいを探そうと考えたりしながら荷造りしていると。こんな夜中なのに部屋のチャイムが鳴った。

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コメント

  1. ラストが怖い…!続きが気になってぐいぐい読んじゃうホラー展開でした!

  2. 黄昏 彼岸 黄昏 彼岸

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