<はじめに>
去る2023年7月、こちら(Text Studio)の管理人である蜂賀三月さんからこのような案内がありました。
【青春21文字のメッセージ】公募に挑戦してみませんか?【企画】
こちらのサイトのみんなで、「第17回青春21文字のメッセージ」に参加してみよう、という趣旨のものです。このコンテストは、21文字以内で各年に合わせたテーマに沿った文章を作り、受賞をすると小冊子と立派な賞状がいただけるという「参加するハードルが低いうえに、受賞したらうれしい」ため、物書きさんが集まるこのサイトであれば参加者が多いのではないか、という内容でした。
要項を調べてみると、どうやら滋賀県を走る「おけいはん」こと「京阪石山坂本線」が全21駅であることから企画が始まった、鉄道と縁深いコンテストだと判明。ゆる乗り鉄である私に参加しない理由はありません。ということで、本当に気軽に応募してみたところ……なんと! 入選することができました!
景品としていただける冊子は、運営さんのもとに余っていた場合、有料で送っていただけます。そこで、私が書く文章を読むのを楽しみにしてくれている祖父に贈り、とても喜んでもらえました(運営さん、その際はありがとうございましたm(__)m)。
というわけで「書いて楽しい・受賞して嬉しい・冊子を貰えて祖父も嬉しい」というwin-win-winなコンテストだったのですが、ひとつだけ心残りがありました。それは、「鉄道好きで応募したにもかかわらず、京阪石山坂本線に乗ったことがない……」ということです。こちらのコンテスト、該当の路線に乗ったことがない人でも応募は可能なのですが、せっかく入選をいただいたのに、乗ったことがないというのはゆる乗り鉄としても、書き手としてもなんだか申し訳ない気持ちがあります。
というわけで、2024年秋、石山坂本線に乗りに行くことにしました! こちらはその際の記録を書き残したフォトエッセイになります。出すのが半年近く遅くなってしまったのは、当時の私が体調不良で、ものを書く気力が著しく低下していたためです……ゆえに、やや記憶が曖昧な部分もありますが張り切って書いてまいります🚃
<事前準備>
京阪石山坂本線は、滋賀県の石山寺駅から坂本比叡山口駅までを結ぶ、2両編成の小さな電車です。といっても、運行本数はかなり多く(だいたい10分に1本くらい)、ローカル線というよりは地元の方たちの生活の足になっている路線、といったほうがよさそうです。
今回は、京阪石山坂本線に乗ることが最大の目的ですが、調べていくうちにプラスアルファで、2つの目的が追加されました。それが以下のとおりです。
1、石山寺への参詣・大河ドラマ館を見に行く
2、成瀬の地元、膳所のまちを散策する
実は、京阪石山坂本線の沿線には、滋賀の見どころがたくさんあります。有名どころでは、近江神宮前駅から徒歩で行ける近江神宮。こちらは漫画「ちはやふる」の聖地として、またかるた大会の開催地として以前から知られた場所とのことです。
また、2024年ホットな場所と言えばやはり石山寺駅が最寄りの「石山寺」。こちら、紫式部が『源氏物語』の着想を得たとされている場所で、2024年の大河ドラマ「光る君へ」にも何度か登場します。そういったつながりもあり、2024年の大河ドラマ館は石山寺の敷地内にあるのです。私は「光る君へ」は途中で離脱してしまったのですが、紫式部と石山寺のつながりは知識としてあったので、せっかくなので参詣しようと考えた次第です。
さらに、同じく2024年ホットな場所が、膳所(ぜぜ)。こちら、「成瀬シリーズ(成瀬は天下を取りにいく、成瀬は信じた道をいく)」の主人公、成瀬が住むまちです。こちらも京阪石山坂本線の京阪膳所駅が最寄りで、作中に多数登場するスポットが実在しています。せっかくここまで来たからには、寄っていきたい場所です。
ということで、途中下車をすることを考えるとフリーきっぷを買った方がよいだろうと考え調べたところ、「紫式部 大津周遊チケット」なるものを見つけました。こちら、京阪石山坂本線乗り放題のみならず、引換券(石山寺入山券・「光る君へ びわ湖大津 大河ドラマ館」入館券)もついていて2,000円と、かなりお買い得なチケットです。しかも、私が調べていた際、たまたま販売元のJR東海が大幅なセールをしており、更に割り引かれた800円で購入することができました。こんなに安くてよいのでしょうか……逆に心配になるレベルですが、ともかくチケットは手に入れたので、あとは現地に行くだけです。
◆紫式部 大津周遊チケット
https://www.keihan.co.jp/k-press/ouing/202402-ticket.php
<京阪石山駅~石山寺駅>
ここからようやく現地レポです。JRと接続している京阪石山駅が出発地点。ここで「紫式部 大津周遊チケット」を引き替えてもらい出発です。ちなみにこのチケット、オンラインで購入する特典でクリアファイルとメモ帳をもらいました。こんなに頂いて800円でいいんですか……👀
京阪石山駅の構内には、「光る君へ」のポスターや紫式部ゆかりの地を示すポスターが多数掲示されています。そして、停まっていた列車は何と「光る君へ」の特別ラッピング車両! 実は、京阪石山坂本線はラッピング車両がとても多く、特定のラッピング車両を狙って見つけるのはけっこう難しいのです。初手で見つけることができたのはかなり運がいいです。
二駅乗って、石山寺駅に到着。線路の幅は非常に狭く、家々が迫ってくる感じがします。そして、石山寺駅は手すりや駅名表示板に紫色を使っており、「紫式部」を連想させます。
石山寺駅から、石山寺まではけっこう歩きます。15~20分くらい見ておいてほうがいいと思います。道中、歴史を感じるお茶屋さんがあったり、紫式部ラッピングのポストがあったり、植え込みに源氏物語豆知識的な看板がちょこちょこ立っていたりと飽きることはありません。
そして石山寺に到着。すぐに参詣、といきたいところですが横にある「揚げみたらし」というのが気になります。こちらみたらし団子が1本150円で買える(購入は2本以上~)という破格のお値段。滋賀界隈、価格がバグっていませんか👀 参詣前に一番ポピュラーな「醤油だれ」をいただきましたが、一口サイズのみたらし団子が1本あたり5個刺さっており、とっても美味しかったです✨ ほかの味もおいしそうだったので、何人かで来てシェアするのもいいかもしれませんね。
石山寺は、山寺というタイプのお寺で、敷地内はかなりの高低差があります。歩きやすい靴、それもできればトレッキングシューズ等で来た方がよいでしょう。大河ドラマ館は門をくぐってすぐ左にありました。放送時期によって内容を変えているのか、私が行ったタイミング(10月下旬)では、紫式部と清少納言の対立に焦点を置いた展示になっていました。また、紫式部(まひろ)役の吉高由里子さんと、清少納言(ききょう)役のファーストサマーウイカさんの対談動画が流れており、そこで足を止めている人も多く見受けられました。
個人的には、石山寺のロケで実際に出演者が身につけていた小物類の展示が興味深かったです。
その後、急ぎ足で参詣し、「月見亭」を見に行き、駅へと戻りました。実はこの後予定が入っており、そこそこ駆け足の行程となっております。石山寺は花寺という別称もあるくらい、たくさんの花が見られるお寺としても有名なので、もう少しお花が見られる季節に、敷地内全体をゆっくり散策しに行くのもいいなと思いました。
<石山寺駅~京阪膳所駅>
石山寺駅に戻ると、待っていたのはなんと「成瀬ラッピング車両」! これから膳所に向かおうとしているタイミングでこれは本当に運がいいです(本日2回目)✨ しかも石山寺駅は始発駅のため、ゆっくり写真を撮ることができます。色々な方向から写真を撮らせていただきました。ちなみにこちらの成瀬号、車内広告も成瀬仕様になっていて中々インパクトがありました。
石山寺駅から京阪膳所駅までは計8駅。後ろの車両に乗り、ホームや路線の周辺の風景を確認していきます(乗り鉄あるある)。まず感じたのは、踏切の多さ。関東のJR路線は、事故防止やいわゆる「開かずの踏切」対策から踏切を減らす方向に進んでいます。そのため「踏切の多い風景」というのは久しぶりに見て、新鮮に感じました。これは「青春21文字のメッセージ」のネタのひとつになりそうだと思います。
そうしてあっというまに京阪膳所駅に到着。成瀬シリーズに多数登場する「ときめき坂」の向きが私の中のイメージと逆で、びっくりしました(私は駅から学校方面に上っているという考えのもと読んでいましたが、実際には下っていました)。私は聖地巡礼というものをしたことがなかったのですが、こういう誤解が解ける・新たな発見があるという意味で、物語の舞台に行ってみるのはアリだなと思いました。
また、ポスターの中にさりげなく成瀬がいたり、そのフレーズも「ここは、私がパトロールしているときめき商店街だ」という地元ならではの内容だったりと細かいところに愛を感じます。
膳所は、近畿地方屈指の進学校、膳所高校があったりと学生街としての一面があります。実際に、まちをぶらついている間に学生さんらしき方を多数見かけたので、活気があっていいまちだなぁと思いました。
<京阪膳所駅~びわ湖浜大津駅>
本当は、もう少し長居したかったのですが例のごとく時間が押しているので、駅に戻り引き続き坂本比叡山口駅方面の列車に乗り込みます。びわ湖浜大津駅で途中下車をして、大津祭曳山展示館へ。こちら、数年前まで無料だったのですが、諸般の事情で最近有料になったとのこと。といっても150円なので、資料館としては格安です。滋賀界隈、価格がバグっていませんか👀(n回目)。
そしてこちらの曳山展示館の方々がとても親切で……! 私が『塞王の楯』のファンだというと、大津城の城カードをいただき、色々なお話を聞かせてくださいました。そう、滋賀は2024年マイベストブック、『塞王の楯』の舞台でもあるのです✨ 舞台となる大津城は現存していませんが、展示館の方が裏手にある石垣を指さして、「これが大津城の跡地の石垣だと思ったら、ロマンを感じませんか?」とおっしゃっていたのが非常に印象的でした。これがあの、匡介が組んだ石垣かもしれない……!
真偽はさておき、職場のすぐ横に名著の舞台があったかも、と思いながら働くのは楽しいだろうなと思いました。そして、閉館時間ぎりぎりにきたにもかかわらず、『塞王の楯』が好きだと言っただけのいち旅行者にそういったお話をしてくださった職員さんの、おもてなし精神がとても嬉しかったです。
さて、外はもう暗くなってきましたが、湖側まで歩いていき、成瀬が乗る「ミシガン」号の発着点をチラ見してから再び列車に乗り込みます。今度はミシガンに乗りに行きたいですね。
<びわ湖浜大津駅~坂本比叡山口駅>
目指すは終点、「坂本比叡山口駅」。その名の通り、比叡山延暦寺の入り口となる駅です。比叡山は言わずと知れた天台宗の総本山で、石山寺は真言宗の大本山。石浜坂本線には「平安時代に栄えた二大宗教の両端を結ぶ路線」という一面もあるようで、非常に興味深いです。
もう日が完全に暮れているので、さすがに延暦寺に行くことはできません。トーマスラッピングが施された駅舎を撮影し、旅の出発点、京阪石山駅に戻ります。帰りはトーマスラッピング車両でしたが、こちらの車両、夜になると室内のほうが明るいので外が見えないという、景色を楽しみたい系乗り鉄としてはやや残念な仕様。そのため、目玉区間のひとつである車道を走るところをはっきりと視認することはできませんでした。これは第二回おけいはんの旅を企画する必要がありそうです🚃 比叡山延暦寺にも行ってみたいですし(※ちなみに私は、高野山金剛峰寺は行ったことがあります)。
<まとめ>
というわけで、京阪石山坂本線の乗り鉄旅は終わりです。実際に乗ってみて分かったのは、21駅の中に観光地がものすごくたくさんあること。そして、滋賀県はここ数年文学・映画の発信地として非常にホットです。
・『ちはやふる(近江神宮)』……漫画
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・「翔んで埼玉2(滋賀県全域)」……映画
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・『塞王の楯(大津城)』……書籍
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・『成瀬シリーズ(膳所)』……書籍
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・「源氏物語/「光る君へ」」……書籍、大河ドラマ、etc.
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ぱっと思いつくだけでもこれだけあります。これらの作品が好きな方は、行って損はありません! 実際に行った私が断言します!!
また、とても旅行がしやすいまちだと感じました。物価は安く、人は優しく、見どころがたくさんある。これは行かない理由がありません。みなさまぜひ、滋賀に行きましょう🚃
2025/3/31追記:
青春21文字のメッセージ 運営さまと成瀬シリーズの作者、宮島さんに本記事をRTいただきました👀 ありがとうございます✨
せっかくですので、各作品を購入できるリンクを追加しました🔗
塞王の楯が単行本版なのと、源氏物語の訳者がこの方なのは私なりのこだわりです📚
[水涸木犀は、amazonアソシエイトプログラムにて収益を得ています。]
※最後の写真は、やたらと踏切が多い石山坂本線です
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